【新刊】「自然」という幻想  多自然ガーデニングによる新しい自然保護
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【新刊】「自然」という幻想  多自然ガーデニングによる新しい自然保護

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■紹介
自然を「元来の姿」に戻そうとしてきた自然保護活動。
外来種を徹底的に駆除、手つかずの自然から人間を遠ざけ、人工物を撤去……。
しかし、それで本当に、地球の自然が守れるのか?

著者は「手つかずの自然こそ至高、自然を元の姿に戻すべき」というこの価値観が、
じつはアメリカでつくり出された「カルト」であり、科学的にも、費用対効果からも、
実現不可能な幻想であると、世界各地の実例から示していく。

自然を「かくあるべし」と限定してきた過去の自然保護のあり方を批判し、
自然をもっと多面的なものととらえ直して、多様な現実的目標設定の下で
自然を創り出す「多自然ガーデニング」を提案する。


■目次
第1章 自然を「もとの姿に戻す」ことは可能か

自然は「遠きにありて思うもの」ではないはずだ
自然を「過去の状態に戻す」ことの矛盾
世界の絶滅首都=ハワイで移入種を除去したら……
ハワイでも問題となる「基準となる過去の自然」
過去を取り戻すための、オーストラリアでの驚くべき苦闘
古い「教義」から自由になりはじめた生態学者たち

第2章 「手つかずの自然」を崇拝する文化の来歴

イエローストーンが「母なる公園」と呼ばれる理由
ウィルダネスの征服の時代│1860年代まで
自然保護運動家ミューアの時代│1860年代以降
「ウィルダネス崇拝」のはじまり│1890年代以降
「ウィルダネス崇拝」の先鋭化と強大な影響力
人間を排除すれば、自然は安定するのか
生態学の理論は現実に合わなかった
自然の変化の激しさは生物も対応できないほど
変化するイエローストーンをどう管理するか

第3章「原始の森」という幻想

ウィルダネスの聖地・ビアロウィエージャ
実はビアロウィエージャは「手つかず」ではない
ビアロウィエージャには現在も人の手が入り続けている
先住民族が多くの大型動物を絶滅に追い込んだ
先住民族はその後も環境に影響を与え続けた
生態学や自然保護運動はなぜ人間を排除したのか
環境活動家はウィルダネスをどう考えているか
ビアロウィエージャの自然はさらに改善できる?

第4章 再野生化で自然を増やせ

オランダの干拓地で太古の草原を再現する
「更新世再野生化」とは何か
北米の更新世再野生化計画に対する賛否両論
アメリカに大型動物を導入するのは本当に問題か
過去を指向しながら新しい生態系を創出する
再野生化で太古のヨーロッパの姿を明らかにする
「人工的な野生」で自然を増やす

第5章 温暖化による生物の移動を手伝う

温暖化に適応する生物の移動は間に合うか
動植物は実際に極方向や高地へ移動している
生物の移動に手を貸すことを躊躇する研究者たち
タブーに挑み、立ち上った市民ナチュラリスト
人による移転という考えを生態学者が認めはじめた
「管理移転」は既成事実化しつつあり止められない
管理移転の指針作りのための実験は意外に困難
ここでも「手つかずの自然はない」ことが問題に
温暖化に対応した最適の植林パターンを探す実験
林業関係者が戦慄した気候予測地図
営利活動による管理移転計画への賛否両論

第6章 外来種を好きになる

外来種は必ず生態系を崩壊させるか
外来種とそれに対する人間の対応の歴史
外来種駆除の現場では何が行われているか
外来種は生態系の不安定化・多様性低下の原因か
従来の「侵入生物学」に異を唱える生態学者
外来種と交雑する「遺伝子汚染」をどう考えるか
画一的な外来種駆除が無意味なら、何をすべきか
外来種を利用しはじめた自然保護論者たち

第7章 外来種の交じった生態系の利点

外来種でできた生態系を持つ島
外来種が在来種より優れている場合がある
「新しい」生態系は生産性も多様性も高く健全かもしれない
はびこる外来種も時間とともに沈静化する
「新しい」生態系が覆う面積は地球の何割か
有用な「新しい」生態系の外来種を除去すべきか
「新しい」生態系の変化を研究すべきだ

第8章 生態系の回復か、設計か?

「川」は人工物であるという発見
生態系を回復するのでなく目的に合わせ設計する
生態系を「設計」する必要があるのはどんなときか
デザイナー生態系とウィルダネスと多自然ガーデン

第9章 どこでだって自然保護はできる

重金属に汚染された川の改善の未来像
あらゆる方法で自然を増やし改善すべきだ
自然回廊で保全地域同士をつなぎ合わせる
減税措置などで農業者も保全活動に巻き込む
農業と自然保護の最適解を求める試み
工業地域や高速道路にも自然は増やせる
狭い庭やバルコニーの小さな自然も有意義
散水も肥料も少なくてすむ野生の庭・在来種の庭
造園家が温暖化適応策にかんする情報提供者に
近くの自然を発見し、近くに自然を受け入れる

第 10 章 自然保護はこれから何をめざせばいいか

「昔に戻す」以外の自然保護の目標を議論する
目標 1 │人間以外の生物の権利を守ろう
目標 2 │カリスマ的な大型生物を守ろう
目標 3 │絶滅率を下げよう
目標 4 │遺伝的な多様性を守ろう
目標 5 │生物多様性を定義し、守ろう
目標 6 │生態系サービスを最大化しよう
目標 7 │精神的、審美的な自然体験を守ろう
多様な目標を土地ごとに設定しコストも考慮しよう

■著者プロフィール
エマ・マリス(Emma Marris) (著/文)
サイエンスライター。自然、人々、食べ物、言語、書籍、映画などについて執筆。数年間記者として勤務していたネイチャー誌のほか、ナショナルジオグラフィック、ニューヨークタイムス、ワイヤード、グリスト、スレート、オンアースなどの雑誌・新聞に寄稿している。ワシントン州シアトル出身、オレゴン州クラマスフォールズ在住。

岸 由二 (キシ ユウジ) (翻訳)
慶應義塾大学名誉教授。生態学専攻。NPO法人代表として、鶴見川流域や神奈川県三浦市小網代の谷で〈流域思考〉の都市再生・環境保全を推進。著書に『自然へのまなざし』(紀伊國屋書店)、『利己的遺伝子の小革命』(八坂書房)、『「奇跡の自然」の守りかた』(ちくまプリマー新書)、『「流域地図」の作り方」(ちくまプリマー新書)』など。訳書にドーキンス『利己的な遺伝子』(共訳、紀伊國屋書店)、ソベル『足もとの自然から始めよう』(日経BP)、スヒルトハウゼン『都市で進化する生物たち』(小宮繁と共訳、草思社)など。 鶴見川流域水委員会委員。

小宮 繁 (コミヤ シゲル) (翻訳)
翻訳家。慶應義塾大学文学研究科博士課程単位取得退学(英米文学専攻)。専門は20世紀イギリス文学。2012年3月より、慶應義塾大学日吉キャンパスにおいて、雑木林再生・水循環回復に取り組む非営利団体、日吉丸の会の代表をつとめている。訳書にステージャ『10万年の未来地球史』(岸由二監修、日経BP)。スヒルトハウゼン『都市で進化する生物たち』(岸由二と共訳、草思社)。

■その他商品情報
出版:草思社
判型・頁数:文庫判、368ページ
発売日:2021年4月5日


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