【新刊】丸い地球のどこかの曲がり角で
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【新刊】丸い地球のどこかの曲がり角で

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■枯淡苑のコメント
全米図書賞候補となった『運命と復讐』の著者ローレン・グロフによる、米国フロリダ州を舞台にした物語短編集。原題は『Florida』。邦訳版の装画はヒグチユウコ。

もっともおすすめしたいのが、冬のナイトウォークで垣間見える人々や街の生態系を水族館に見立て、「わたし」のユーモアあふれる観察と妄想が織りなす『亡霊たちと抜け殻たち』。

10年前に夫婦でフロリダに移住した「わたし」が、人・自然・街並みが作り出す小さな時の流れをさらさらと綴ります。身近な恐怖と小さな喜びを点在させながら、それらが読後に心地よく漂うようかのように詩的に描かれています。作品名はポール・サイモンの『Graceland』の一節から。

『フラワー・ハンターズ』にも、他者との距離を感じる1人の妻、育児の閉塞感、近隣環境の変化など、似たモチーフや設定が並びますが、『亡霊たち〜』とは対照的にじわりと胸が張り裂けそうになる展開が待ち受けます。

表題作『丸い地球のどこかの曲がり角で』は、両親の不和・摩擦に大きく影響を受けた男の一生を第三者視点から淡々と語り、幼少から蓄えられた呪いや失われた愛に向き合う物語。

そのほか、各作品に共通して幾度となく登場するのがトカゲ、ワニ、蛇、鳥、蝶などの動物や、花、樹木、湿原、沼などフロリダ独特の生態系。そして、すっと入り込むようにさりげなく「亡霊」も数多く現れ、11篇の物語を彩ります。

どのお話にも、フロリダに移住して10年以上経つ著者の同地への愛憎や温暖化に対する意識、家庭の悩みなどが見え隠れしており、エッセイに近い印象も受けます。そのせいか、朗らかな風景・人物描写と対になるように、現実の危うさ・不条理・不確実性も率直に描かれており、純粋なエンタメとは違った、ただならぬ荒々しさをうっすらと帯びています。

読み手としては自らが住む土地、関係する人々との関係性、自分の置かれている状況を見つめ直す気持ちが沸くこともありつつ、著者は物事を緻密に描きすぎず、おだやかで乾いた文体ながら、ストーリーテリングが巧みで小気味良く、どの物語も解釈を広く取りやすく作られています。不思議とどの話も前向きになれる、生きていく力をもらえる本です。
(特にこの感覚が得られる『亡霊たちと抜け殻たち』だけでも読んでみてもらいたいです)

■こちらの本もおすすめです
- USO4
- 掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン作品集
- 松本の本 第3号 

■目次
- 亡霊たちと抜け殻たち
- 丸い地球のどこかの曲がり角で
- 犬はウルフッ! と鳴く
- ミッドナイトゾーン
- ハリケーンの目
- 愛の神のために、神の愛のために
- サルバドル
- フラワー・ハンターズ
- スネーク・ストーリーズ
- イポール
- 謝辞
- 訳者あとがき

■著者プロフィール
ローレン・グロフ
1978年ニューヨーク生まれ。大学院で創作を学び、「ニューヨーカー」などで短篇を発表。2015年、長篇『運命と復讐』で全米図書賞最終候補、高い評価を得る。いまアメリカで最も期待される物語作家のひとり。

光野 多惠子
1953年生まれ。津田塾大学卒業。訳書に、L・グロフ『運命と復讐』、R・B・パーカー『勇気の季節』、L・シュライヴァー『少年は残酷な弓を射る』(共訳)、J・S・アンダーソン『最後の宝』など。

■その他商品情報
出版:河出書房新社
判型・頁数: 四六変型判、312ページ
発売日:2021年2月22日