【新刊】山羊と水葬

【新刊】山羊と水葬

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■紹介
吹雪もやんで、きらきらと雪原に光が反射して、目が痛いほど晴れわたる朝、山羊小屋から緊張した気配が伝わってきた。山羊が鼠捕りの毒だんごを食べたのだ。積雪は一メートルをゆうに超し、土まで掘るのはとても無理。凍った山羊の体を馬橇にのせて、吹雪のなかを石狩川の鉄橋へ。男たちが声を合わせて筵ごと持ちあげ、緑色の欄干の向こうへ落とす。水葬だ。水しぶきが見えたかどうか。白く煙る雪のなかに「それ」は消えていった。少女の記憶はそこでふっつり途切れる。


■著者プロフィール
くぼたのぞみ
一九五〇年、北海道新十津川生まれ。翻訳家・詩人。
著書:『J・M・クッツェーと真実』(白水社)、『鏡のなかのボードレール』(共和国)
詩集:『風のなかの記憶』(自家版)、『山羊にひかれて』(書肆山田)、『愛のスクラップブック』(ミッドナイト・プレス)、『記憶のゆきを踏んで』(水牛/インスクリプト)
訳書:J・M・クッツェー『少年時代の写真』(白水社)、『マイケル・K』(岩波文庫)、『鉄の時代』(池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-11、河出文庫)、『サマータイム、青年時代、少年時代││辺境からの三つの〈自伝〉』(インスクリプト)、ポール・オースターとの『往復書簡集』(共訳、岩波書店)、『ダスクランズ』『モラルの話』(共に人文書院)、チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ『なにかが首のまわりに』『アメリカーナ』(共に河出文庫)、『半分のぼった黄色い太陽』『男も女もみんなフェミニストでなきゃ』『イジェアウェレヘ フェニミスト宣言、15の提案』(いずれも河出書房新社)、サンドラ・シスネロス『マンゴー通り、ときどきさよなら』『サンアントニオの青い月』(共に白水Uブックス)、マリーズ・コンデ『心は泣いたり笑ったり』(青土社)、ゾーイ・ウィカム『デイヴィッドの物語』(大月書店)ほか多数。


■その他商品情報
出版:書肆侃侃房
判型・頁数:四六判、216ページ
発売日:2021年10月28日