「ケアを聴く」という棚・カテゴリを新設します
「ケアを聴く」という棚・分類を新たに設けます。
物語を通じて、知識を通じて、ケアを感じるをテーマに、ケアについて傾聴することを意識した選書とします。
"ケア"ということばは、国内でもよく目にする機会が増えてきていますが、介護や医療などの文脈を超えてその用法・可能性があらためて見直されつつあります。日本語では、配慮・世話・思いやり・推し量る・関心を持つなど様々な意味を持つことばです。
きっかけとしては『ケアと倫理のエンパワメント』を読み、文学を通したケアに対して関心を持ち始めたのですが、少しずつケアを取り巻く要素を掘り下げていくうちに、当店のコンセプトである「調和と自立」と、「インターネットとうまくつきあう(はなれる と よりそう)」との間をつなぐ節点として捉えられるのでは、と思いました。
特に、「インターネットとうまくつきあう」の実践にあたり、ネット空間では「他者」の存在がほぼ必ず発生することが、他者がいなくては成り立たないケアとの共通点を強く感じた部分になります。
XR技術の促進や、ネット関連法律の強化によって身体性や記名性が補強され、匿名性の排除が進み、他者の存在をより身近に感じやすくなった側面があるものの、デジタルウェルビーイングという観点でまだまだ課題が多い状況は変わりません。
その中で、ネット空間においてケアの概念が普及されることで多様性・包摂性を汲んだ技術、ないしはコミュニティとして変化できるのでは(少なくともその一助につながるのでは)という希望的観測が、本テーマに取り組む動機のひとつとして挙げられます。
具体的に考えていくと、「インターネットとよりそう」 × 「ケア」という観点では、SNSなどネット上でのやりとりの中における他者への配慮、物事の背景に対する想像力を培うことができるかもしれません。また、WebアクセシビリティやXRなどから、障がい者への配慮や社会参画を手助けする先進技術や考え方を学べます。
「はなれる」 × 「ケア」の場合、ネット漬けから心身を癒すためのケア(セルフケアとも言いますね)、家族・友人・ペットといった身近な他者へのケア、ひいては天然資源や動物を育む自然環境に対するケアなど、もっと物理的な現実を見つめていく視点と成りえないだろうかとも思っています。
このように、「はなれる」「よりそう」の2つをクロスオーバーできる概念としての可能性があるのではないかと、個人的にはある種のわくわくを感じざるを得ません。
ケアは「利他」ということばとも似ているかもしれません。
人が持つ「他人に優しくありたい / あるべき」という考え方は、偽善や権威の誇示、義務の押し付けといった利己的行為に着地するリスクも孕んでおり、成就するかは受け手次第であり、結果を必然的にコントロールすることができないもののようです。
利他の実践において、想定外や他力などの偶然性に頼らざるを得ないというやっかいな性質もあるが故に、人間性をめぐる非常に難解なテーマのひとつと感じています。
他者、自身、そして環境やロボットといった無生物までをも含むケアということばが持つ広大さ、深淵さについて、現時点で私もまだまだ理解が足りていないからこそ試行錯誤していく分野として、また、今後の商品の選定基準として長く保っていきたいと思っています。
選んだ本は、こちらからアクセスできます。
掲載数はまだ少ないですが、随時追加予定です。
店舗でも小さくではありますが、棚のコーナーを設けていますので、ご来店の際はぜひ試しにご覧ください。