枯淡苑のおたより | '22 5月号

〈お店のこと、松本のこと〉

関東甲信も、本格的な梅雨入りです。

先月を振り返ると、5月はGWやクラフトフェアなど世間が賑わいを見せた月でした。
実はクラフトフェアは初めての参加でしたが、会場や街中の盛り上がりはここ数年見られなかった活気を見せ、久しぶりに松本らしいお祭りを体感できました。

あまり時間が取れずじっくりは見られませんでしたが、作家さんや知人含め、さまざまな方とお話ができたのも嬉しかったです。

枯淡苑は相変わらずゆっくりとやっていますが、営業時間を10:30〜19:00まで拡大しました。

また、梅雨入り前の時期に特有の比較的おだやかな気候を礼賛する意味も込めて、〈枯淡苑のそよそよ〉という展示を5月24日からおこなっています。

 

 〈気になる作品〉

今月はちょっとテーマをずらしてYoutubeチャンネルの話です。
最近、本担当の脳を占有しているのが、Cal NewportのYoutubeチャンネル

『デジタルミニマリズム』『ディープワーク』などに代表されるコンピュータサイエンスの准教授 Cal Newport のQ&Aメインの番組です。

内容は、「何にも邪魔されず深く集中して仕事を行うやり方」について、視聴者からの質問に合わせて回答してくれるという極めてシンプルな構成。たまにネットに関する時事的な話もあります。

どうしてこう私がのめり込んでしまうかというと、インターネットと生産性のつながりを考える上で、彼のワークスタイルがコンピュータサイエンスの准教授という肩書きらしからぬ、極端なほどに素朴なシステムに落とし込んでいることです。

彼もスマホは持っていますが、主に使う道具は ①紙のノートブック、②ローカルのテキストファイル、 ③タスク管理ツール trelloという比較的クラシックな3点セットでやりくりしているようです。アナログ・ローカル・クラウドから1点ずつ、3分の2がオフライン。trelloももう10年選手なので、最新ツールなんて駆使していない。

彼は、「コンテキスト・スイッチ」という短時間で起こるタスク切り替え......たとえば、チャットのやりとりが終わったら、別のルーチン作業を始めて、ふとしたタイミングでメールのinboxを覗いて、顧客からの最新メールの返答を考える......そんな仕事の仕方を問題視しています。

この状態が多くの人にとって、深く考えながら生産的に仕事に取り組むことを妨げている、だから「タイムブロッキング」を駆使して自分の時間を取り戻そう、と強く推奨しています。

「コンテキスト・スイッチ」や「タイムブロッキング」についてはAsanaのサイトがわかりやすく解説しています。これらの概念について知らなかったという方はぜひご一読ください。

彼のフィロソフィーやシステムの詳細は実際にYoutubeをご覧いただきたいのですが、私は今年の春頃からそれらを参考に色々真似をしてみました。

①タイムブロッキングの考えを反映させた髪のノート(ノートはクロッキーSQのサイズ感、4Bの鉛筆の書き心地が心穏やかになります)で日次/週次/四半期での予定管理をおこない、②ローカルで使うObsidianというMarkdownエディタに日々のワーキングメモリを消費するものを流し込み、③Trelloで絶対に忘れたくないタスクの管理をするようになりました。

個別のツールについて延々書きたいところですが割愛しますが、実際やってみてのあくまで個人的な感想としては、これまでと比べ意識的に感じられた精神・認知負荷が下がり、ひとつひとつのタスクに腰を据えて取りかかれるようになったことに強いメリットを感じました。
重要事項を優先度高くして時間を確保して取り組むことも、毎回ではないですが体感できるほどには十分にできた気がします。

また、画面に映されるものは「読むもの」という認識に変わり、余計な'リンク'へのクリックが減りました。(極端な話、必要ないクリックには広告のように課金させたいくらいにクリック・タップは慎重になりたいでものです)

以前まで、特に2010年以降はたくさんのSaaS・アプリを使い回す自分カッコイイ!(そしてブラウザタブは100以上開いてる)という自惚れもありましたが、なかなかどうしてオールドスタイルな道具構成でもどうにかなるどころか意外と充足度は上がるもので、これまで随分多くの効率化クラウドサービスに振り回されてしまってたなとも実感しました。

ただし1日あたりのタスクの消化量は減ってしまうため、スピードはやや犠牲になる印象です。とはいえ、長く苛まれていた焦燥感や疲労感が低減され、エネルギーコントロールがしやすくなったのは大きいので、しばらくこの仕組みで楽しくやれそうです。手書きとローカルファイルは思ったより心地よいものでした。

結局デバイスやブラウザ内に大量のアクションを促すボタン(機能やリンク)が付いていて、人間の脆弱かつ永続しない意思の力だけでは、どうにも逃れることはできないのですよね。

ここ数年しばらく叫ばれている「SNSの通知を切れ、退会しろ」「スクリーンタイムを測って制限しろ」などは、原則正論かもしれませんが実行や長期の継続は難しいものです。

現在のシステムに移行して、スマホの使用回数は減りましたが、スマホはやはりデバイスそのものへの引力がもっとも強いと感じます。手に持ったが最後、やらなくていいことにもっとも飛びつきやすくなる怖さも再確認しました。

便利過ぎる技術との付き合い方について、Cal Newportは「デジタルテクノロジーに対して人々はそれぞれの哲学を持つ必要がある」とも言っており、それは私も概ね賛成で、個々人が突き詰めて人生の優先事項を考えて、扱う道具の優先度を定めて時間配分を変えることその人なりの物事の進め方の解が導かれるのでは、と考えています。

つまるところそれが「インターネットとうまくつきあう」ということになると思いますし、枯淡苑ももっとそのあたりに問いかけをして深めていきたいところです。(ネット利用を最低限に抑えることで豊かな読書の時間も取れるようになるのですから!)

長々書きましたが、5/24 に発売されたばかりの『超没入 メールやチャットに邪魔されない、働き方の正解(原題:A World Without Email)』のことを思い出し、今回は作品とはちょっと違うYoutubeチャンネルの話を取り上げました。
ちなみに『超没入』は、当店でも近々入荷予定です。

こういったお話にご興味ある方、Youtubeを見て興味が出てきた方、ぜひお店までご連絡ください。色々お話ししましょう。(お店に来て話を振ってくれるのが一番嬉しいです)

(本担当)

 

〈告知〉

さて、市内の感染増加の影響もあり長らく止まっておりました、ドライフラワーのレッスンが再開となりました。今回は「紫陽花のリースレッスン」です。

まだ空きはございますので、こちらのリンクよりご予約ください
それでは、6月もよろしくお願いいたします。