最近読んだ本

たまには読書感想文を。図書館でパっと選んで借りてみた本と、買入時に入った本の3冊。

突然だけど、最近は中東情勢が気になりすぎてニュースに浸ることが増えてしまった。戦争がかなり身近な時代になってしまった。

テクノロジー関連はどれも2017-18年の本なので、もう10年近く前の本になってしまっている。
それでも、情報との付き合い方、民主主義とテクノロジーの相容れなさについて読んでみて、やはりエッセンスはあまり古くならないと強く感じた。

退屈すれば脳はひらめく 7つのステップでスマホを手放す Manoush Zomorodi NHK出版

原題は"Bored and Brilliant: How Time Spent Doing Nothing Changes Everything"なので、邦題ほど具体的に書いていない。

"ちょっとしたメールチェックや写真撮影が、あなたの才能を奪っている。なぜなら、真の創造性・生産性はボ?っとしているときにこそ生まれるからだ。クリエイティブな“退屈タイム”を生み出す7つのステップを徹底指南! あなたの中の空想力や創造性をもう一度取り戻すための、スマホ時代の必読書"とのこと。

人間が放出するドーパミンの量には限りがあるらしく、"芸術をはじめとする、新しくて価値のあるものを創造する驚きや感動のために使うのかーーそれともツイッターに使うのか"という問いが印象的だった。
あと、子どもたちにあえてスマホを持たせてサマーキャンプに参加させて自立心を養うやりかたも興味深い。

著者が担当するポッドキャスト番組で視聴者を巻き込んだ「7日間の退屈するプロジェクト」を始めたのが本書を書くきっかけだったそう。
プロジェクト内でもっとも人気だったという「バックパック/鞄に入れておく」というやり方は自分にも合っていた。

「ディープワーク」や「デジタルミニマリスト」でおなじみのCal NewportのPhone Foyer Method(別室のコンセントにスマホをつないでおくこと)をしばらくやっていたけれど、新居はコンセントが良い感じのところになく手に取る回数が増えていた。
バックパックに入れるようにしたら、更に視界から消えてだいぶ集中力が戻ってきた気がする。
自分の脳は単純なものだ。

書き方がうまいというか、編み物の体験教室とかでぎゅっとエッセンスを凝縮して色んな話をしてくれる優しいお姉さんみたいな本だ。
プロジェクト参加者の実体験や、数多くの専門家のコメントがあり、凝りすぎず深すぎず、まずは薄く広く、軽い気持ちでデジタル機器との付き合い方を知っていくためには最適そうだ。

早稲田古本屋日録 向井透史 右文書院

早稲田にある古本屋「古書現世」の二代目店主の随筆。
あっさりとしたエッセイなので、夜お風呂に入りながら読んだ。

本書に載っている日記は、ひとつひとつが淡々と短く詩的な雰囲気もある。
アップダウンが少ないので安心して読める。お茶漬けっぽいさらっとした感覚だ。
お客さんとの買取ならではエピソードも色々面白いが、特に古本屋ならではの地味な作業の徒労感には共感を禁じ得ない。

古本屋随筆というと、出久根達郎氏のも有名だが、この本を読んでしまうと(出久根氏が直木賞作家ということもあり)話の構成がきれいに整いすぎて、味付けが濃く感じる。

都会にある古本屋ということもあり、催事やら引っ越しやらで仲間が協力し合っているのが印象的だった。
地方と共通していたのは「店に客が来ない」ことか。

操られる民主主義 デジタル・テクノロジーはいかにして社会を破壊するか ジェイミー・バートレット /秋山勝 訳 草思社

またしても、タイトルが原題のニュアンス(The People Vs Tech: How the Internet Is Killing Democracy (and How We Save It))をだいぶ変えている気もしないでもない。
(訳者解説にあった直訳で十分な気がしたが、色々事情があるはず。趣味で翻訳をやった身としては「原文の意図を残しつつ売れるタイトルにする」のは相当骨が折れる仕事だと感じる。)

まだ60ページほどしか読んでいないが、訳がかなりドライでアカデミックな文書を読まされている感じもするが、著者の悲壮・嘆きみたいなものを強く感じた。

軽重問わず、AIやSNSなどテクノロジーに多くの価値判断を任せていくと、政治や対人関係、自己認識という重要な事に関する評価も機械に任せてしまい、人間的かつ民主的な決定を下すことができなくなっていく、という話が出てくる。そもそも民主主義とテクノロジーは全く別の時代に生まれ、原理・原則が大きく異なるから、バランスを取るのは非常に難しい。
特段新しくはない言説な気もするが、新たなAIサービスに飛びついて多面的にAI慣れしていく現代では忘れがちになる観点だ。
(モラルと政治に関する大部分の判断をコンピュータに任せてしまう状況を"モラル・シンギュラリティ"という表現は言いえて妙)

この頃私がニュースから離れられなくなっているのは、なぜトランプは大きな混乱を生み出しながらも国の代表として立場を継続できるのか?という疑問が胸の奥から離れないせいだ。このあたりは、政治とはテクノロジーだけでなく他のメディアやコミュニティーなどを含んだもっと複合的な問題じゃないのか、という偏見もあり、どれだけテクノロジーが私たちの判断を歪めているかはまだ確証が持てていない。
ちなみに、本書にトランプ(第一期の大統領選)についても丸々1章使って書いてある。

SNS政治らしきものは各所で盛んになっているが、発信する側が何をするかよりも、私たち一般市民が無意識に選び取ってしまっている価値観や判断のプロセスは一度紐解いて見たほうが、次の選挙やその他政治に関わる行為でもより納得のいく選択が取れるかもしれない。

特に選挙においては、大きなテーマ、大量の情報、少ない選択時間しか与えられず、選ばれた代表たちが何をしたかもよくわからないまま次の選挙が来ることを繰り返しているように感じる。急速に時代が変化しているとは言われていても、民主主義、選挙制度、テクノロジーのいずれも噛み合っていない感が強くモヤモヤが小さくなることはない。(完全に蛇足だが、そもそも"民主主義"の定義すら人によって大きく異なり曖昧だろう。"生産性"も同様だ。)

本書はまだ読みかけの上、深堀りできるところが色々ある気がするので、また全部読み終わったら感想を書こうと思う。